未解決ジャーナル編集部
【2026年5月5日 現在進行中】 犯人は未逮捕。広島県警は殺人・現住建造物等放火の疑いで捜査を継続している。
深夜3時半の炎と悲鳴
2026年2月16日午前3時35分ごろ、広島県東広島市黒瀬春日野1丁目の閑静な住宅団地に、2本の緊急通報が相次いだ。
「建物2階から火が出ている」 「血まみれの人が助けを求めている」
消防と警察が駆けつけると、燃え盛る住宅から逃げ出した50代女性が、頭部から出血し、顔やのどにやけどを負った状態で近隣住民に助けを求めていた。女性は「強盗に襲われた」「男に頭から灯油のようなものをかけられた」と説明した。
警察官が住宅裏手の敷地内に入ると、血を流して倒れている男性が発見された。
川本健一さん(当時49)——この家に住むリフォーム会社役員だった。死因は、刃物で首を複数回刺されたことによる失血死。屋外に逃げ出たところを刺殺されたとみられる。敷地内からは「油のようなもの」が検出され、犯人が川本さんを室内で襲い火を放った後、逃げ出した川本さんを屋外で追って刺殺した疑いが浮かんだ。犯行態様から強い殺意がうかがわれると捜査本部は判断した。
川本さんの妻は身体的被害を負いながらも一命をとりとめた。
広島県警は70人態勢の捜査本部を立ち上げ、犯人の行方を追い始めた。
「恨みを買う人じゃない」——川本健一さんとはどんな人物か
川本さんを知る関係者は取材に「従業員思いで、恨みを買う人じゃない」と語った。誠実な仕事ぶりで知られ、リフォーム会社を経営する傍ら地域に根を張って生きてきた人物像が浮かぶ。
発生から1か月後の3月時点でも、犯人の行方は掴めていなかった。「目撃情報が乏しい」と広島県警が認めるほど、犯人は巧妙に痕跡を残さなかった。
捜査本部は遺留品の収集・資料の鑑定・関係者への聞き取りを継続。川本さんにトラブルの相手がいなかったか、当時の行動状況を慎重に調べ続けた。
2か月後——35キロ離れた山あいの土の中で
事件から2か月以上が経過した4月29日午前11時40分。東広島市の事件現場から東約35キロ離れた場所——山陽新幹線三原駅から北西に約4キロの山あいにある集落、広島県三原市沼田2丁目のある会社敷地内で、県警が捜索中に異変を見つけた。
土の中に、男性の遺体が埋められていた。
県警によると、この日の捜索は「東広島市の事件の捜査の過程で、証拠物が埋められている可能性があるとの情報」に基づくものだった。つまり、東広島の殺人事件を捜査する中で掴んだ情報が、35キロ離れた別の遺体発見につながったという、異例の経緯だ。
遺体は腐敗が進んでいた。
翌4月30日、DNA鑑定の結果、遺体の身元は徳田雅希さん(29)——三原市宮沖5丁目に住む自営業の男性と判明した。死亡してから相当の日数が経過しており、死因は特定に至らなかった。
徳田雅希さん——「真面目でよく仕事をする人」
徳田さんの姿を最後に確認したのは、3月9日のことだった。翌10日正午、親族が行方不明届を地元警察署に届け出た。
調べによると、徳田さんはかつて遺体が発見された現場(三原市沼田)で鉄工業を営んでいた。その後は別の場所に移って会社を経営していたという。
徳田さんを知る男性は「最後に会ったのは1年ほど前だが、リフォームの仕事をしており鉄工関係にも詳しかった。真面目でよく仕事をする人だった」と語った。
徳田さんの家族は「家族一同大変動揺しており、息子の死を受け入れられずにいます」とのコメントを県警を通じて発表した。
「逃走経路」に使われた可能性——防犯カメラ設置の要請
三原市の現場近くに住む40代男性の証言が、2つの事件の関係性を示唆する。
この男性によると、遺体発見の約1か月前、自宅を訪れた広島県警の警察官からこう頼まれていたという。
「東広島市の事件の逃走経路に使われている可能性があるので、防犯カメラを設置させてほしい」
男性はこれを承諾した。警察が遺体発見の1か月以上前から、三原市沼田周辺を東広島事件の「犯人の行動圏内」とみて注視していたことを示す証言だ。
2つの事件をつなぐ「接点」
5月4日、広島ホームテレビが新たな事実を報じた。
川本さんが代表を務めるリフォーム会社が、遺体が発見された三原市の現場近くで改修工事を請け負っていたというのだ。工事は2024年の暮れ以降に行われており、川本さんの会社と三原市沼田の現場には業務上の接点が存在した。
また、取材によると徳田さんは3月上旬に取引先に「体調不良で休む」と連絡した後、音信不通になっていたとされる。
2つの事件の「接点」として浮かぶのは以下の点だ。
- 川本さんのリフォーム会社が、三原市の遺体発見現場付近で工事をしていた
- 徳田さんはリフォームの仕事をしており、鉄工関係にも詳しかった
- 徳田さんはかつて遺体発見現場の敷地で鉄工業を営んでいた
- 警察は東広島事件の捜査情報をもとに三原市の現場を特定した
この接点が何を意味するのか——広島県警は「2つの事件の関係性については明らかにしていない」としている。
「被害者」か「関与者」か——徳田さんをめぐる謎
捜査上のもう一つの焦点は、徳田雅希さんの立場だ。
現時点では徳田さんは「被害者」として扱われ、捜査関係者も「殺害された可能性がある」と判断している。しかし、川本さんが殺害された2月16日より前後して、徳田さんが東広島事件に何らかの関わりを持っていた可能性も、捜査の選択肢から排除されていない。
2月16日の東広島での殺人放火、そして3月上旬〜4月上旬の間に死亡したとみられる徳田さん。時系列的に、川本さんが先に殺害されている。
「なぜ徳田さんは三原市沼田の土の中に埋められていたのか」——その答えはまだ出ていない。
捜査の現状と今後の焦点
| 項目 | 内容(2026年5月5日時点) |
|---|---|
| 東広島事件 発生日時 | 2026年2月16日 午前3時35分ごろ |
| 被害者①(東広島) | 川本健一さん(当時49)、リフォーム会社役員 |
| 死因(川本さん) | 頸部刺傷による失血死 |
| 妻の状況 | 頭部出血・顔・のどにやけど、命に別状なし |
| 三原遺体 発見日 | 2026年4月29日 |
| 被害者②(三原) | 徳田雅希さん(29)、自営業 |
| 徳田さん死亡推定 | 3月上旬〜4月上旬ごろ |
| 死因(徳田さん) | 不詳(腐敗のため特定できず) |
| 2事件の接点 | 川本さんの会社が現場近くで工事・徳田さんが同現場で鉄工業を経営 |
| 逮捕状況 | 未逮捕(2026年5月5日時点) |
| 捜査本部 | 70人態勢(東広島市事件) |
地域に残る不安
東広島市の住宅団地に住む住民は「早期解決を願うばかり」と取材に語った。深夜の放火・刺殺という凄惨な手口で行われた犯行から約3か月。犯人はいまなお逮捕されておらず、地域の不安は消えていない。
「従業員思いで、恨みを買う人じゃない」——川本さんを知る人がそう語る一方、かくも周到に準備されたとみられる犯行の背後に何があったのかは、まだ闇の中にある。
広島県警は情報提供を呼びかけている。
【編集部注】
本記事は2026年5月5日時点の報道に基づきます。2つの事件の関連性については広島県警が「明らかにしていない」としており、本記事における「接点」「つながり」の記述はあくまで報道事実の整理です。捜査は継続中であり、今後の逮捕・公式発表によって大きく内容が変わる可能性があります。川本健一さん・徳田雅希さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
初出:2026年5月5日 / 未解決ジャーナル編集部


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