日本には、犯人がほぼ特定されていながらも逮捕や起訴に至っていない、謎めいた未解決事件が存在します。証拠不十分や公訴時効、組織の闇など様々な理由で“捕まえられない犯人”たち。ミステリー仕立てのこのリストでは、そんな日本国内の代表的な5つの未解決事件を年代順にご紹介します。事件名・発生年・場所とともに、どんな事件だったのか、浮上した容疑者、捕まえられない理由、そして現在の捜査状況を追ってみましょう。
1. 長岡京ワラビ採り殺人事件(1979年、京都府長岡京市)
1979年5月、京都府長岡京市の竹林でパート勤務の主婦2人がワラビ採りの最中に殺害されました。被害者の遺体には凄惨な暴行の痕跡があり、一人は肋骨を折られ肝臓が破裂、もう一人は体に包丁が刺さったまま発見されました。現場近くからは被害者が命がけで残したとされる鉛筆の芯や走り書きのメモが見つかり、事件の凄惨さと謎めいた状況証拠が世間を震撼させました。
浮上した容疑者と謎
・ 事件当日に山から駆け下りる姿を目撃された少年A(後にアリバイが成立)
・事件直前に別の主婦に声をかけた“中年の男”
・地元の不良グループに属した建設作業員2人(突然の更生など不審行動)
なぜ逮捕・起訴できないのか
決定的な物証がなく、公訴時効が1994年に成立したため、もはや法的に裁くことは不可能となりました。
現在の捜査状況 時効成立後、公式な捜査は終了。地元で語り継がれるのみで、真相は竹林の闇に消えたままです。
2. グリコ・森永事件(1984〜85年、関西圏中心)
江崎グリコ社長誘拐を皮切りに、大手菓子メーカーを狙った連続企業脅迫事件。犯人グループは「かい人21面相」を名乗り、現金要求や青酸菓子ばらまき予告など“劇場型犯罪”で警察と世間を翻弄しました。
浮上した容疑者と謎
・“キツネ目の男”と呼ばれた不審人物
・暴力団や政財界にパイプを持つ在日韓国人フィクサー、許永中氏
・尼崎事件の角田美代子の弟、月岡靖憲
なぜ逮捕・起訴できないのか
犯行グループは証拠を残さず、公訴時効(1989年)が成立。警察は犯人を特定できないまま事件は迷宮入り。
現在の捜査状況 2024年にも「警察は真犯人を把握していた」とする証言が報じられたが、公的には未解決のままです。
3. 北関東連続幼女誘拐殺人事件(1979〜1996年、栃木・群馬)
半径約10kmの範囲で幼女ばかり5人が行方不明・殺害された一連事件。当初はバラバラに扱われていたが、冤罪を暴いたジャーナリスト清水潔氏の取材で同一犯の可能性が濃厚に。
浮上した容疑者と謎
・“ルパン”と呼ばれる中年男性:事件当時、現場周辺で目撃情報多数。
なぜ逮捕・起訴できないのか
物証不足に加え、警察が冤罪を認め再捜査することへの組織的抵抗が壁に。複数件で時効も成立。
現在の捜査状況 公式には全件未解決。DNA技術の進歩に期待が寄せられるが、警察の腰は重いままです。
4. 八王子スーパー強盗殺人事件(1995年、東京都八王子市)
閉店後のスーパー事務所で女性従業員3人が射殺され、現金約500万円が奪われた事件。平成の三大未解決事件の一つ。
浮上した容疑者と謎
・中国人強盗グループの一員とされる男性X(カナダから身柄移送されるも黙秘)
・拳銃調達役の暴力団組員
なぜ逮捕・起訴できないのか
物証不足と国際的手続きの壁。Xは旅券法違反のみで有罪となり釈放、殺人容疑は立件できず。
現在の捜査状況 強盗殺人は時効撤廃対象のため捜査は継続。しかし捜査本部は解散し、特命捜査体制に移行。
5. 警察庁長官狙撃事件(1995年、東京都)
警察庁長官・國松孝次氏が自宅前で銃撃され重傷を負ったテロ事件。当初はオウム真理教の報復と見られたが、後年になって別の人物が名乗り出る。
浮上した容疑者と謎
・ 元左翼過激派の中村泰元受刑者:獄中手記で犯行を示唆し、同型銃の購入記録も存在。
・ 内部犯行説・陰謀説など複数説が並存。
なぜ逮捕・起訴できないのか
公安部はオウム説、刑事部は中村単独犯説と方針が割れる中、決定的証拠が得られず、20010年に公訴時効が成立。
現在の捜査状況 真犯人が特定されても裁判は不可能。中村元受刑者は2018年に病死し、事件は未解決のままです。
おわりに
以上、犯人が特定されているにもかかわらず逮捕・起訴に至っていない日本の未解決事件5選を紹介しました。いずれの事件もミステリー小説さながらの背景と人間ドラマがあり、真犯人が今もどこかで息をしているかもしれないと思うと背筋が寒くなります。時効が成立しても真実の解明が被害者・遺族の救いとなることを願い、事件の風化と闇に抗い続けたいものです。
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