背乗り(はいのり、這い乗り)とは、スパイや犯罪者が他人の戸籍や身分証明を乗っ取って、その人物になりすます行為です。警察用語であり、英語では「Identity Theft(アイデンティティ窃盗)」に相当します。背乗りには大きく分けて (1) 既に死亡・失踪している人の戸籍を不正取得して成りすますケース と (2) ターゲットを拉致・殺害してその人の身分証を奪い成りすますケース の2種類があります。いずれも他人の人生・身分を乗っ取る重大な不正行為であり、日本国内でも過去にいくつか明るみに出た事例があります。本記事では背乗り事件の具体例、背乗りの手口やリスク・被害内容、発見・防止策、そしてSNSやネット上での議論動向について、報道や専門家の見解を踏まえながら解説します。
日本国内の背乗り事件の具体的事例
日本では、主に外国工作員によるスパイ事件や凶悪犯罪に伴う戸籍乗っ取り事件として背乗りが報道されてきました。以下に年代順で代表的な事例を挙げます(年号・事件概要・出典を明記)。
- 1960年代~1970年代:複数の外国人スパイ事件 – 1960年代後半から70年代にかけて、北朝鮮工作員による背乗り事件が相次ぎました。たとえば、「西新井事件」では1970年に秋田県から密入国した北朝鮮スパイのチェ・スンチョルが在日韓国人の協力を得て東京・西新井で偽名生活を開始し、知り合った日本人に次々と背乗りして諜報活動を行いました。彼は1978年の蓮池夫妻拉致事件の実行犯でもあり、背乗りで取得した日本人名義のパスポートを使って海外へ出入国していたことが判明しています。約15年にわたって発覚しませんでしたが、1985年に協力者の逮捕をきっかけに背乗りが明るみに出ました。
- 1980年:辛光洙事件 – 北朝鮮工作員の辛光洙(シン・グァンス)が1980年に宮崎県で日本人の原敕晁さんを拉致し、原さん名義の戸籍を不正入手して運転免許証や日本国旅券を取得、自ら「原敕晁」になりすまして多年にわたり韓国や日本で諜報活動を行っていた事件です。辛光洙は1985年に韓国で逮捕され、自供により拉致と背乗りの事実が明らかになりました。この事件は後に北朝鮮拉致問題がクローズアップされる中で象徴的なケースとなり、日本国内でも大きく報じられました。
- 1987年:大韓航空機爆破事件 – 1987年11月、北朝鮮工作員の金賢姫(キム・ヒョンヒ)らが大韓航空858便に爆弾を仕掛け爆破したテロ事件です。金賢姫ら実行犯は、日本人拉致被害者から背乗りした偽の日本名義旅券(蜂谷真一・真由美名義)を使用し、日本人夫婦を装って各国を移動していました。彼女らは逮捕後に日本人への成りすましを自供し、背乗りによる国際テロの実態が世界に知れ渡りました。
- 1995年(発覚):黒羽・ウドヴィン事件 – ロシア対外情報庁(SVR)の工作員が日本人の黒羽一郎さんに背乗りしていたスパイ事件です。黒羽一郎さん本人は1965年に失踪していましたが、戸籍上は1969年に東京へ転籍して結婚・資産購入まで記録されていました。1992年に在オーストリア日本大使館で「黒羽一郎」名義の旅券更新申請がありましたが、提出写真が失踪前と別人だったため不審が発覚し、公安の捜査でソ連系スパイによる背乗りと判明しました。工作員は捜査直前に逃亡し未逮捕ながら、この事件は戦後日本で最も巧妙な背乗りスパイ事件として報じられています(参考:毎日新聞ja.wikipedia.org、産経新聞ja.wikipedia.orgの報道)。
- 2012年:尼崎連続変死事件(尼崎事件) – 2012年に発覚した兵庫県尼崎市の連続殺人・死体遺棄事件です。主犯の角田美代子(当時64歳)は複数の家庭に入り込み支配していく「家乗っ取り」的手口で8人を殺害した凶悪事件ですが、彼女自身も戸籍ロンダリング(養子縁組の悪用)による背乗りをしていた可能性が指摘されています。角田美代子は旧姓「月岡」でしたが、角田家に養子入りして改姓することで旧姓時代の前科を消し、さらには「実は在日朝鮮人の李○○で、角田美代子という戸籍を乗っ取ったのでは」との噂も報じられました。真相解明前に角田は自殺したため詳細は不明ですが、事件の根底に背乗りによる名前・戸籍の乗っ換えがあるとされています。
- 2013年:堺市一人暮らし高齢女性殺害事件 – 2013年、大阪府堺市で一人暮らしの北川睦子さん(69歳)が行方不明となり、後に遺体で発見された事件です。近隣住民の通報で捜査が始まり、北川さんと近所付き合いのあった無職の男女2名と韓国籍の男1名が逮捕されました。恐ろしいのは、北川さんが失踪中の2013年3月1日付で、犯人グループの1人の住所に北川さんが転居したとする住民票手続きが行われていたことです。犯人の女が北川さんになりすまして役所に転居届を出しており、北川さんの戸籍・生活丸ごと背乗りする計画だった疑いがあります。もし近所の人が異変に気付かなければ発覚が遅れ、年金や財産を乗っ取られていた可能性も指摘されています。
- 2013年:他人同士の養子縁組を勝手に繰り返された事件 – 2013年、東京都の57歳男性が「身に覚えのない養子縁組が戸籍上7回も行われ、自分の姓が5回も変わっていた」ことに気付き、養子縁組無効を求めて家裁に提訴したケースがあります。調査で、この男性は2001年から2005年にかけて面識のない複数人の養子や養親に勝手にされていたと判明しました。本人不在のまま戸籍が改ざんされ、氏名変更と養子縁組を繰り返す「戸籍ロンダリング」行為であり、背乗り目的で戸籍を悪用された実例として報じられました(平成25年・東京家庭裁判所への提訴事案)。このように本人が知らぬ間に戸籍を使われる手口も存在します。
- 2014年:大阪西成区准看護師殺害事件 – 2014年3月、大阪市西成区で准看護師の岡田里香さん(当時29歳)が行方不明になり、5月に遺体で発見された事件です。同級生だった日系ブラジル人の女が犯人として逮捕・起訴されました。犯人の女は不法滞在状態で中国に渡航する必要があったため、日本人である岡田さんに成り代わる目的で殺害したとされています。実際、岡田さん失踪後の5月3日には岡田さん名義の日本旅券が不正取得され羽田空港から上海へ出国記録があり、犯人は岡田さんになりすまして逃亡を図りました。犯人は後日出頭・送還され、裁判で「人を殺害して成り代わりたいという身勝手な動機で計画的犯行に及んだ」と指摘され無期懲役が言い渡されています。
- 2017年:京都・中国人不法残留者の日本人なりすまし事件 – 2017年10月、京都府警が京都市在住の中国籍の男(47歳)を入管難民法違反(不法残留)容疑で逮捕しました。この男は1991年に学生ビザで来日し在留期限は1996年まででしたが、その後実在する日本人の年金手帳を入手して本人になりすまし、21年間も不法滞在を続けていたのです。年金手帳は写真付きではなく更新も不要な盲点で、それを身分証明として悪用していたことが判明しました。発覚のきっかけは、この男が放置自転車を無断で持ち去った窃盗容疑で検挙されたことでした。日本人の名前で日常生活を送り、年金手帳以外にも銀行口座など様々な登録を済ませており、戸籍こそ動かさないものの身分乗っ取り(背乗り)の典型例とされています。
以上が主な事例です。ほかにも、北朝鮮による日本人拉致事件(久米裕さん拉致事件など)では拉致前に戸籍謄本を騙し取っているケースがあり、拉致=背乗り目的だったと見られる例もあります。戦後間もない混乱期には、死亡者が多く身元確認も不十分だったため、多数の背乗りが行われたとも言われます。現代でも上記のように様々な背乗り事件が確認されており、日本国内で背乗りが実際に起きた具体例として周知されています。
背乗り行為の手口・リスク・被害内容と発見・防止策
背乗りの典型的な手口
背乗りは非常に巧妙かつ計画的に行われます。その典型的な手口をまとめると以下のようになります。
- 戸籍・身分証の不正取得: 戸籍謄本や住民票、運転免許証、パスポートなど、公的身分証をターゲット本人または役所から不正に入手します。前述のように死亡者・失踪者の戸籍を狙ったり、拉致・殺害して本人の証明書類を奪取するケースがあります。たとえば辛光洙事件では被害者の戸籍から旅券まで丸ごと取得し、北朝鮮のエージェントが日本人「原敕晁」として活動していました。
- 成りすましの実行: 入手した戸籍や身分証を使い、他人になりすまして生活します。日本国内で暮らす場合はもちろん、他国へ渡航する際にも日本人名義のパスポートは極めて有用です。北朝鮮工作員が日本国旅券で第三国に入国すれば目立たないため、拉致工作で旅券を得ようとしたのもそのためだと指摘されています。国内のケースでも、例えば京都の中国人男は本来の日本人になりきり、名前を騙って就労や住居契約、携帯電話契約なども行っていました。
- 戸籍ロンダリングの悪用: 家庭への入り込みや養子縁組・結婚を悪用する手口もあります。尼崎事件の角田美代子は自ら他家へ養子入りして改姓した上で、他人と次々養子縁組を結び直し、ターゲット家族の財産乗っ取り(家族ごと支配する「家乗っ取り」)を行っていました。また東京のケースでは勝手に養子縁組を登録することで、戸籍上で赤の他人を親族に仕立て上げ、ターゲット男性の戸籍を転々と移すという巧妙な細工がされています。このように公的手続きを装った戸籍の書き換えも手口の一つです。
- 狙われやすい人物: 背乗り犯がターゲットに選びやすいのは、身寄りが少なく周囲に気付かれにくい人です。工作員は自分と年齢や性別が似ていて旅券を取ったことがない人物、身寄りがなく失踪しても大事にならない人物を事前に選定して拉致するケースが報告されています。一般犯罪でも高齢で一人暮らしの人など孤立した人が狙われる傾向があります。
背乗りのリスクと被害内容
背乗りは、被害者本人にとっても社会にとっても重大なリスクと被害を伴います。以下、その主な内容です。
- 生命の危険: 背乗り目的で直接拉致・殺害されるケースがあり(例:西成区准看護師殺害事件や拉致事件)、被害者の生命が奪われます。「本人がいなくなっても入れ替わりに気付かれないようにする」ため、極端な場合は命が狙われるのです。
- 財産・信用被害: 背乗りされた人の財産や社会的信用が損なわれる恐れがあります。他人に成りすまされたまま各種契約や金融取引をされると、本人の名義で勝手に借金を作られたり、資産を奪われたりします。尼崎事件では角田美代子が乗っ取った家族の財産を次々食い物にしていました。また知的障害者の男性が何度も戸籍を操作され、その度に名義で銀行口座を開設されて振り込め詐欺に悪用された例もあります。
- 犯罪への悪用: 背乗りによって得た「新しい身分」で犯罪行為を行うことが可能になるため、社会にとって大きな脅威です。スパイ活動は典型例ですが、それ以外にもマネーロンダリング(資金洗浄)や脱税、密入国など様々な違法行為に利用されます。犯人は過去の経歴を一新し、犯罪歴をリセットしてしまうため(前科のない別人として行動できる)、捜査の攪乱にもつながります。
- 冤罪や身分乗っ取り被害: 背乗りされた本人が生存している場合、自分の名前で勝手に犯罪や契約が行われれば身に覚えのない容疑をかけられる恐れもあります。また戸籍を盗まれたまま放置されると、公的記録上は自分が消えて別人が存在してしまうというアイデンティティの喪失にもつながりかねません。
- 国家・公共の安全保障リスク: 背乗りは国家規模では情報機関の工作手法として使われ、安全保障上のリスクとなります。日本人に成りすましたスパイが国内外で自由に行動することで機密情報が漏洩したりテロが実行されたりする危険性があります。実際、北朝鮮やロシアの事例でその脅威が証明されています。また多くの背乗りスパイが長年発覚せず活動していた事実は、日本の治安当局にとって深刻な課題となりました。
背乗りの発見方法と防止策
背乗りは巧妙に行われるため、発見が難しく事件化しにくいのも特徴です。しかし過去の事例から、いくつか発覚の契機や有効な対策が浮かび上がっています。
- 発覚のきっかけ: 多くの場合、偶然の契機や周囲の指摘で背乗りが露見しています。例えば黒羽・ウドヴィン事件では旅券更新時の写真照合で別人だと見破られました。京都の事例では軽犯罪での逮捕を機に指紋照合などから不法滞在が判明しています。堺市の事件では近隣住民が「最近見かけない」と警察に相談したことが発端でした。このように身分と実態の齟齬や日常と違う不審な点が鍵となります。
- 国家レベルの対策: 公的には、背乗り対策として本人確認の厳格化が進められています。世界各国では国民識別番号(ID制度)を導入しており、日本でも2010年代からマイナンバー制度(個人番号)が普及し始めました。しかし専門家からは「日本はまだ運用が甘く、背乗りし放題の側面がある」との指摘もあります。例えば健康保険証や年金手帳など写真のない証明書で身分証明ができてしまう現状が悪用されています。防止策としてはマイナンバーカードの取得と携帯義務化、そしてそれ以外の書類を身分証として認めない運用が有効とされています。マイナンバーに顔写真が紐付いた本人確認を徹底すれば、背乗りされた人も生活できなくなるため異変に気付くし、不審者は各種手続きで排除されやすくなるからです。実際に「中国人による背乗りはマイナンバーの厳格運用で防げる」という意見もあります。
- 個人ができる防止策: 背乗りの被害者とならないために、私たち個人が心がけられる対策もいくつかあります。
- 孤立しない: 親戚や友人・近所付き合いを持ち、定期的に連絡を取り合うことが重要です。背乗り犯は「いなくなっても周囲が気づかない人」を狙うため、一人暮らしで誰とも交流がないとターゲットにされやすくなります。逆に言えば、普段から周囲とコミュニケーションを取っていれば、万一自分に何かあった時に不審に思ってもらえるので、背乗り犯にとってリスクが高まり狙われにくくなります。
- 戸籍や公的記録のチェック: 普段あまり見る機会はありませんが、定期的に自分の戸籍謄本を確認するのも有効です。先述のように知らぬ間に養子縁組を追加されていた例もありますから、年に一度くらいは役所で戸籍を取り、見覚えのない記載や自分の改姓履歴などがおかしくないか点検すると安心です。住民票やマイナンバー情報についても、不審な閲覧履歴がないかチェックすることが望ましいでしょう。
- うまい話に乗らない: 見ず知らずの人から「あなたを養子にすると助かる人がいる」とか「名義を貸してほしい」といったおいしい話を持ちかけられても決して応じないことです。背乗り犯は口がうまくプロなので、油断すると騙されてしまいます。甘い誘いに乗った結果、拉致されて北朝鮮送り…という可能性すらゼロではないと警鐘を鳴らす専門家もいます。特に突然現れた古い知人なども要注意で、西成区の事件では犯人が同級生を装って近づいています。
- 自分名義の公式IDを持つ: パスポートや運転免許証、マイナンバーカードといった写真付き身分証を取得しておくことも有効です。例えばパスポートは海外に行かなくても所持しておけば、第三者があなた名義で新規発行することはできません。西成区の事件では、犯人が不法滞在状態で「パスポートだけが必要」だったため、日本人でパスポート未取得の岡田さんを狙った面があります。あらかじめ本人が旅券を持っていれば狙われにくかったとも言われています。同様に運転免許やマイナンバーカードを持っていると、公的に顔写真照合される場面が増えるため、他人が成りすますのが難しくなります。
これらの対策を講じることで、背乗りのリスクを下げることができます。特に高齢のご家族がいる場合は周囲が定期的に様子を見守り、少しでも不審な出来事(急に連絡が取れなくなった、知らない養子縁組通知が届いた等)があれば警察や行政に相談することも大切です。
SNSやインターネット上での背乗り議論の傾向
背乗りはその衝撃的な性質から、SNSやインターネット上でもたびたび話題にのぼります。大きく分けて犯罪・事件報道に対する反応と、陰謀論的・政治的な文脈での言及が見られます。それぞれの傾向を分析します。
- 事件報道に対する反応: 背乗り事件が報じられると、SNS上では「怖すぎる」「普通に生活していても狙われるのか」といった驚きと恐怖の声が多く見られます。例えば2012年の尼崎事件で「背乗り」という言葉を知ったという人も多く、「戦後や震災直後に背乗りが多発したと聞くが、なかなか表沙汰にされず対策も進んでいないのではないか」と政府の対応に不安を示す意見もありました。また「いい加減国が動くべきでは?」という切実な声もあり、背乗りへの社会的な警戒感がうかがえます。
- 陰謀論・政治的な文脈: 一方でネット論壇では、背乗りがしばしば外国人陰謀論や政治批判と結びついて語られる傾向があります。特に「在日外国人や帰化人が日本人になりすましている」という主張が一部で根強く、Twitter(現X)では「#背乗り」ハッシュタグ付きでそうした投稿が散見されます。最近では香港出身の活動家や著名人に対して「別人と入れ替わっているのではないか」といった疑惑が取り沙汰され、「もし背乗りが確定なら罰則を!」など過激なコメントも見られました。また「某政治家は背乗り議員だ」「ヤクザは在日朝鮮人に背乗りされた」等、根拠不明な噂が飛び交うこともあります。これらはしばしば偏見や差別感情とも結びつき、背乗りという言葉が一人歩きしている側面があります。
- 拡散手法とユーザー反応: SNS上で背乗り話が広まる際には、刺激的な見出しの記事やまとめブログの引用が多用されます。例えば「『マイナンバー制度』は中国人らが容易に“背乗り”できる危険な制度だった!!」という煽り文句の記事が拡散され、一部ユーザーが「今時の背乗りはマイナカードの写真を差し替えるだけでOK」などと投稿していました。これに対して「いや背乗り犯にマイナンバーを持たせないための制度では?」と冷静に指摘する人もおり、受け手の反応は様々です。キーワードとしては 「北朝鮮工作」「拉致」「パスポート」「帰化人疑惑」「中国人」「マイナンバー」 などが頻出し、ネット上の背乗り議論が外国勢力のスパイ行為や移民への不信感と結びついていることがうかがえます。
- 具体的なSNS事例: 2023年前後には、ある女性ジャーナリストと国会議員との間で「背乗り疑惑」を巡る論戦が発生し、裁判沙汰(いわゆる「背乗り裁判」)に発展したケースもありました。このようにネット上では、事実かどうか定かでない段階で人物に「背乗り」のレッテルを貼り糾弾する動きも見られます。一部の保守系インフルエンサーが「今年から日本で背乗り犯罪が一気に増える可能性がある」と警告すると、それに呼応してフォロワーが不安を拡散するといった現象も起きています。他方、「証拠もないのに他人を背乗り呼ばわりするのは行き過ぎだ」と批判するユーザーもおり、SNS上の議論は賛否両論です。
- デマと真実の混在: ネット上の背乗り情報には真偽不明なものも多く含まれています。典型的なのは東日本大震災直後に多数の背乗りが発生したという噂です。震災で多数の行方不明者が出て住民基本台帳も流出した地域があり「その混乱に乗じて工作員が被災地に入り、行方不明者の戸籍を乗っ取った可能性がある」とネットで噂されました。しかし具体的な証拠は示されておらず、どれほど行われたかも不明です。このように背乗りは恐怖心を煽りやすい題材であるため、事実と推測が入り混じった情報が拡散しやすい点には注意が必要です。実在の事件に即した議論も多い一方で、一部には根拠薄弱な陰謀論的主張もあるため、ネット情報を鵜呑みにせず冷静に見極めることが求められます。
おわりに
背乗り(なりすまし)は、日本でも現実に起きてきた深刻な犯罪・スパイ行為です。過去の事例からその手口や怖さが浮き彫りになる一方、SNS上では事実に基づく警鐘と根拠の薄い噂が混在して語られている状況です。私たちとしては、最新の公式情報や報道を参照しつつ正確な知識を持つこと、そして日頃から戸籍や身分証の管理に気を配り、地域社会での見守りを大切にすることが重要でしょう。背乗りは決して過去の遺物ではなく、現代でも起こり得る問題です。幸い、日本でもマイナンバー制度の普及など少しずつ対策は進んでいますが、個人レベルでも引き続き注意を払い、「自分だけは関係ない」と思わず備えておくことが肝心です。
以上、背乗りに関する具体的事例、手口やリスク、そしてネット上での議論動向について解説しました。過去の教訓を踏まえつつ、社会全体で警戒と対策を講じていくことが求められています。
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